「隠蔽捜査7-棲月(せいげつ)」を読んで
 

2018年8月 26日 (日)
 棲月(隠蔽捜査7)    今野 敏著   2018年1月発売

 今野敏の作品を読み始めたのは平成19年1月に「隠蔽捜査」(平成17年発売)が初めてだった。その後今回の作品「棲月」まで60冊以上の今野敏の作品を愛読している。

 今野敏の作品は警察小説のジャンルが多いが、その中でも「隠蔽捜査」シリーズはメインになるもので、初回の「隠蔽捜査」で吉川英治文学新人賞を受賞し、第2回の「果断・隠蔽捜査2」で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞している。

このシリーズは

 「隠蔽捜査」    平成17年(2005)発売、

 「果断 隠蔽捜査2」 平成19年(2007) 〃

 「疑心 隠蔽捜査3」 平成21年 (2009)  〃

 「初陣 隠蔽捜査3.5」平成22年 (2010) 〃

  「転迷 隠蔽捜査4」  平成23年(2011) 〃

 「宰領 隠蔽捜査5」 平成25年(2013) 〃

 「自覚 隠蔽捜査5.5」平成26年(2014)  〃

  「去就 隠蔽捜査6」 平成28年(2016) 〃

 

「棲月 隠蔽捜査7」 平成30年(2018) 〃

 

 

 と続いており、今回で9冊目である。

 このシリーズの主役は普通の警察小説の刑事では無く、警察庁のキャリア官僚の竜崎伸也警視長である。竜崎は私利私欲とは無縁で、国家公務員としてあるべき姿や、原理原則に忠実であるため変人といわれている。

 竜崎はある事件によって警察庁長官官房総務課長から大森署の署長に左遷されたが、それにめげることなく活躍する内容がこのシリーズのメインで、最初は戸惑った部下の署員たちからも厚い信頼を寄せられるようになる。

 しかし次回から神奈川県警刑事部長に抜擢されることになった。

 作者は、このシリーズを今後も続けると表明しているので、次作からは竜崎の神奈川県警での活躍が見られることになる。

 今野敏の作品紹介は2016年に「平成27年後半印象に残った本」として紹介した中に「自覚  隠蔽捜査5.5」を載せてある。また2017年に「継続捜査ゼミ、回帰、を読んで」という隠蔽捜査シリーズ以外の今野敏の作品を紹介しており、今回で3度目である。

 今回の「棲月 隠蔽捜査7」は、鉄道、銀行、文部省のシステムがダウンし、出勤や銀行業務などに障害が発生するという3件のサイバー犯罪が行われ、それと同時に殺人事件が発生するが、そのすべてがコンピューターを駆使するハッカーによる犯罪であるようであり、しかもそのハッカーは未成年者と思われた。それにより、従来の犯罪捜査の手法だけでは捜査がうまくいかず、少年係や新設されたサイバー犯罪対策課などとも協力しあって解決に導くという新しい捜査方法が描かれており、その間に神奈川県警への異動の内示があり、大森警察署から離れることに未練を感じつつ去っていくという内容である。

(この項終わり)


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