仙丈岳,甲斐駒,鳳凰三山縦走 イバイチの
旅のつれづれ


南アルプス仙丈,甲斐駒登山

  平成24年(2012)から54年前の昭和33年(1958)9月21日〜24日に、南アルプスの仙丈ヶ岳,甲斐駒ヶ岳,鳳凰三山縦走を計画した。今回もパートナーが見つからず単独行になった。

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 中央本線伊那市駅からバスで高遠を経由して戸台という集落まで行き、そこから歩き始めた。3日前大型台風が過ぎたばかりで、戸台川に架かる7つの丸木橋は全て流されており、河原を歩き流れのへつりを伝って戸台川を遡り、赤河原という開けた場所にある丹渓小屋まで登って来た。しかし小屋には土砂が流れ込み半分くらい埋っていてゆっくり休むことも出来なかった。一息入れてそこから標高差600m近くある八丁坂のつらい登りを過ぎるとやっと北沢峠である。峠付近には時ならぬ湖が木立の中に出現していた。ボーとでも浮かべそうな大きさで物凄い雨量だったのだと驚いた。しかしその割に山は荒れておらず登山道も流されていないようでやや安心した。

 現在は南アルプス林道が出来ていて、長野県側では戸台口から北沢峠まで1時間で行く林道バスがシーズンには1日5往復走っていて歩かずに北沢峠まで行け、今昔の感がある。南アルプス林道は山梨県側では芦安から夜叉神トンネルを通り広河原まで、さらに広河原から北沢峠まで続いているので、白根三山、甲斐駒、仙丈岳登山は格段に楽になっている。

 既に夏も過ぎ、樹木が黄色く色付き始めた仙丈ヶ岳へのトラバースの曲がりくねった径を辿ると前方に子牛のような動物が草を食べていた。同行のやはり単独行の人が「あっ!かもしかだ!」と小声で言ったので慌ててカメラの準備を始めたら、その気配でかもしかは振り向いたと思うと飛ぶような速さで急峻な崖を駆け上がっていった。生まれて初めてカモシカを見たがディズニー映画のバンビの細い足をイメージしていたので子牛に似た恰好と太い足には幻滅を感じた。しかし急な崖をがさがさと駆け上がった脚力とスピードには驚いた。
 やがて日のあるうちに宿泊予定の薮沢小屋に着いた。台風の後で番人が山を降りていて居らず、登山者も同行の単独行の人だけだったので広い部屋で気楽にのうのうと過せた。小屋の後側には甲斐駒ヶ岳がその八合目に聳える摩利支天と共に白亜の大理石の岩峯を夕映えに輝かせていた。(写真は甲斐駒をバックに薮沢小屋で)

 翌朝は素晴らしい好天になった。夜明け前に千丈ヶ岳に向かい小屋を飛び出す。登るに連れ朝日が山頂を照らし始める中をサブリュックだけで足取りも軽く午前6時頃仙丈ヶ岳山頂(3,033m)に着いた。見渡せば朝日は鳳凰三山の上に輝き東には富士山が首をだし、逆光の中に北岳,間の岳,農鳥岳の白根三山が聳り立つ。(写真は仙丈ヶ岳山頂からの北岳,間の岳)

 北側には間近に鋸岳から甲斐駒ヶ岳に連なる稜線が朝日を浴びて居り、その先の雲海の上には八ヶ岳の峰々が浮かんで見える。西方遥かには北アルプスが連なり、南には塩見岳,荒川岳から赤石岳,聖岳と続く南ア南部の山並みが見渡せる。何時までもその景観を見て居たかったが、今日中に甲斐駒にも上る予定だったので長居は出来ず、名残惜しく小屋に戻り朝食後すぐ甲斐駒に向かい出発する。(写真は仙丈ヶ岳山頂からの甲斐駒、鋸岳バックに八ヶ岳が見える、塩見,荒川岳方面の山並み)

 深田久弥は仙丈岳について「日本アルプスで好きな山は北では鹿島槍、南では仙丈である。何よりその姿がよい。単純なピラミッドでもなければ鈍重な容量(マッス)でもない。その姿に軽薄や遅鈍のないところが好きなのである。スッキリとして品がある。ちょっと見ては気づかないが、しばしば眺めているうちに、次第にそのよさがわかってくるといった山である。」と「日本百名山」に好意的な文を寄せている。

 前日の登山道を北沢峠まで戻り仙水峠に向かう。ここから見上げる摩利支天の覆いかぶさるような白亜の風貌は素晴らしいものがある。ここから駒津峰へは急な登りである。駒津峰から間近に見る駒本体と摩利支天の真っ白な花崗岩の偉容は壮観である。しかし山の天気は変わり易く、すぐガスがかかってきて今朝登った仙丈ヶ岳は見えなくなってしまった。アサヨ峰を隔てた白根三山もやがて隠れてしまいそうだ。(写真は仙丈中腹からの甲斐駒 [右側の鞍部が仙水峠]、ガスに煙る甲斐駒山頂、駒津峰からの白根三山)

 ここから甲斐駒に続く真っ白い花崗岩の砂礫は綺麗なのだが崩れて歩きにくく、登るのに苦労することおびただしい。甲斐駒ヶ岳山頂(2,967m)にたどり着いた時はガスが切れて暑いくらいの気温だったが、あいにく晴れているのは平野の方で北岳,仙丈方面の展望はきかなかった。暫くの休息の後、仙水峠から北沢峠に戻り北沢長衛小屋に泊まる。(写真は白砂の甲斐駒、甲斐駒山頂付近、山頂の不動明王の社の前で)

 深田久弥は甲斐駒について、中央線に乗ると「さっきまで遠かった南アルプスが、今やすぐ車窓の外に迫って来る。甲斐駒ケ岳の金字塔が、怪奇な岩峰摩利支天を片翼にして、私たちの眼をおどろかすのもその時である。汽車旅行でこれほど私たちに肉薄してくる山もないだろう。(略)日本アルプスで一番代表的なピラミッドは、と問われたら、私は真っ先にこの駒ヶ岳をあげよう。その金字塔の本領は八ヶ岳や霧ケ峰や北アルプスから望んだ時、いよいよ発揮される。南アルプスの巨峰群が重畳している中に、この端正な三角錐はその仲間から少し離れて、はなはだ個性的な姿勢で立っている。まさしく毅然という形容に値する威と品をそなえた山容である。
 日本アルプスで一番綺麗な頂上は、と訊かれても、やはり私は甲斐駒をあげよう。眺望の豊かなことは言うまでもないとして、花崗岩の白砂を敷きつめた頂上の美しさを推したいのである。(略)私が最初にこの峰に立った時は、信州側の北沢小屋から仙水峠を経、駒津峰を越えて行った。六方石と称する大きな岩の傍を過ぎると、甲斐駒の広大な胸にとりつくが、一面に真白な砂礫で眼映いくらいであった。9月下旬のことでその純白のカーペットの上に、所どころ真紅に紅葉したクマコケモモが色彩をほどこしていて、さらに美しさを添えていた。ザクザクと白い砂を踏んで、頂上と摩利支天の鞍部へ通じる道を登って行くのだが、あまりにその白砂が綺麗なので、踏むのがもったいないくらいであった。(略)甲斐駒ケ岳は名峰である。もそ日本の十名山を選べと言われたとしても、私はこの山を落とさないだろう。」と「日本百名山」で絶賛している。

 翌日長衛小屋を出て三度仙水峠を通る。ここはそのロマンチックな名前と甲斐駒摩利支天の風貌と共に忘れがたい峠である。天候は急速に悪化し、アサヨ峰から早川尾根を行く頃雨になった。尾根道の縦走路を広河原峠,白鳳峠と黙々と通り過ぎる。夕方近くなると急速に気温が下がってくる。地蔵ヶ岳近くの鳳凰小屋に転げ込み、急いでお湯を沸かして飲んだコーヒーがとてもうまかった。

 翌日、朝4時ごろ起き出し賽の河原で御来光を仰ぐ。今日は天気が良いかと思ったが北岳はガスの中で全然見えずがっかりした。地蔵ヶ岳(2,760m),観音岳(2,870m),薬師岳(2,762m)の鳳凰三山の縦走は胡麻の様な白黒の石と砂の混ざり合った砂礫の径を歩く所が多い。観音岳から振り返ると僅かにガスの間から地蔵の尖ったオベリスクが見え隠れしている。ガスはますます深く視界も狭まる一方であり、薬師岳を過ぎて南御室小屋でひと休みした後は一瀉千里に夜叉神峠まで降りた。(写真は御来光、観音岳から地蔵岳オベリスクを望む、薬師岳付近の白砂、薬師岳の降り口付近)

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1白根三山縦走

2裏銀座,槍穂高
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3尾瀬から
   会津駒へ


4後立山縦走


5仙丈,甲斐駒,  鳳凰

6奥秩父主峰縦走

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