安曇野の春など

’１１安曇野の春など （3） 　北杜

イバイチの
旅のつれづれ

　５．北杜市の桜

　山梨県北杜市は長野市安曇野市より１１カ月早く、２００４年１１月に明野村、須玉町、高根町、長坂町、大泉村、白州町、武川村が合併し、更に２００６年に小淵沢町が追加合併した市である。ここには平成９年４月に訪れて、日本３大桜の一つである「山高神代桜」や八ヶ岳をバックに大きく優雅に花をつける「わに塚の桜」を見た。

　その時の事を書いた紀行文は「イバイチの旅のつれづれ、甲信旅巡り ‘09山梨桜桃紀行」にあるので見て欲しい。
今回はその時は時期的に少し早くて見られなかった清春芸術村の桜と実原（さねはら）桜並木を見ることにした。あいにく天気は下り坂で、雨まじりだが時々日が射す変わり易い天候だった。

　まず清春芸術村に行く。ここにはパリのモンパルナスにある円形のアトリエ「ラ・リューシュ」（「蜂の巣」と呼ばれ、若き日のシャガール、スーチン、モジリアニなどの巨匠たちが住んでいた所として有名であり、現在はパリ市の記念建築物として保存されている。）と同じ設計で１９８０年（昭和55年）に作られ、同じく「ラ・リューシュ」と名付けられた集合アトリエがある。（写真は芸術村入口の桜及び桜に囲まれたラ・リューシュ全景）

　また１９８３年（昭和58年）に開館した｢清春白樺美術館｣があり、｢ルオー・コレクション展｣をやっていた。この美術館は国内有数のルオー・コレクションを有することで知られている。また今年（２０１１年）安藤忠雄の設計による光の美術館クラーベ・ギャラリーという自然光だけで鑑賞する美術館が出来ていた。（写真は清春白樺美術館入口の前と美術館入口から見たラ・リューシュ）

　ここには太いソメイヨシノが多く植えられていて、甲斐駒と桜とラ・リューシュがバランス良く眺められるビューポイントなのである。ただしそれは好天に恵まれた時のことで今日はあまり期待できない天候で、甲斐駒がみえる時は桜には陽が当らずカメラマン泣かせの日和だった。

　北杜市の桜は「山高神代桜」（エドヒガン樹齢２,０００年）と小渕沢に近い「神田（しんでん）の大イトザクラ」（エドヒガン樹齢４００年）が有名である。「神田の大イトザクラ」は晴れていれば八ヶ岳や甲斐駒をバックにした雄姿を見せるので期待していたのだが、今回見に行った時はすっかり樹勢が衰えて見る影もなかった。回復させるために防風ネットや幹に保護の筵状の藁を巻きつけてあったが、ここ数年は鑑賞に堪えないのではないかと思う。しかし樹木は別にして桜花の方は例年通り可憐で沢山咲いていた。

　芸術村から国道２０号線に出て白州中学校の信号を尾白川渓谷の方に入り、更に実原（さねはら）桜並木方面への道を行くと途中から県指定の天然記念物になっている「関の桜」に行く細い小道がある。北杜市の桜マップにも昨年までは載っていなかった桜で、場所も分かりにくい。「神田の大イトザクラ」も県指定の天然記念物なのでその代わりに載せたのかなと思ってしまった。　この桜もエドヒガンで推定樹齢が４００～５００年とのことである。樹勢も旺盛で立派な桜であり、他に見に来ている人は無く、ちょうど陽が当ってきたのでゆっくりと眺められた。

　実原（さねはら）桜並木に行く。ここには７５０メートルの並木に約２００本の桜が植えられており、南アルプスを眺めながら桜のトンネルを散策する良い場所である。「山高神代桜」より１週間ほど後に見ごろを迎えるので比較的空いている。

　天気はまた曇り始め甲斐駒と桜を撮るために暫らく待ったが残念ながら良い写真にはならなかった。山と花を同じ画面に写し込む時は陽の光があることが絶対条件で、カメラの性能やカメラマンの技倆は二の次である。花や人物、近くの風景などに被写体を変えて撮るか次回のチャンスを期待して退散するしかない。

　その日は諏訪ＩＣから、まだ雪のちらつくビーナスラインを通り女神湖畔のチャペルのあるホテルに泊まった。
(写真は雪の残る白樺高原とホテル入口の泉水、客室からのチャペル)

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