立山黒部1

立山黒部アルペンルートと富山県の旅 ①

イバイチの
旅のつれづれ

平成２６年９月３０日～１０月３日
　第１日　水戸駅―信濃大町駅―
　　　大町山岳博物館―大町温泉郷
　第２日　立山黒部アルペンルート
　　　　（扇沢駅―黒部湖―大観峰
　　　　―立山室堂―弥陀ヶ原―
　　　千寿ヶ原（立山駅）
　第３日　称名滝―立山駅―
　　　高岡駅(土蔵造りのまち）
　　　　― 氷見駅
　第４日　富山近代美術館―水戸駅
　　　*********************************************************
１．信濃大町

　２０１４年（平成２６年）９月２５日から１０月７日まで有効の「大人の休日倶楽部パス」を利用して「立山黒部アルペンルート」から富山県内を旅行した。「大人の休日倶楽部パス」は６５才以上の人が入会できるＪＲ東日本ジパング倶楽部会員対象の格安パスである。このパスはシーズンオフの閑散期に販促の手段として発売していると思っていたが、今回は紅葉シーズンの先駆けに間に合う日程で発売された。

　期間中、北海道・東日本エリア５日間乗り放題２５，０００円。北陸・東日本エリア４日間乗り放題１７，０００円で新幹線、特急指定席が６回まで利用可能というのは大変お得で、小生も今まで何回も利用していた。

　今回のメインである「立山黒部アルペンルート」は今年（平成２６年）から４３年前の１９７１年（昭和４６年）に開通した世界的にも大規模な山岳観光ルートである。しかし開通してから半世紀近く経つのに、なかなか行くチャンスが無かったが、今回思い立って出掛けることにした。

　立山には１９６３年（昭和３８年）７月にテント持参で室堂から登った。その後、剣沢にテントを張り、剣岳に登る筈だったが、アクシデントにより登れずに下山した苦い思い出がある。その１９６３年（昭和３８年）は昭和３４年から始まった黒四（くろよん＝黒部第四発電所ダム）が竣工した年である。映画｢黒部の太陽｣にあるように大町トンネルが大破砕帯に阻まれるなどの困難を克服して全通したのは昭和３３年だった。それによって黒四（くろよん）建設のめどが立ち、更に５年の歳月を経て完成したのである。そのトンネルが現在扇沢駅から黒部ダムに通じる関電トンネルトロリーバスが走っている場所である。

　黒四（くろよん）はその後正式名称が黒部ダムになり、ここだけを訪れて湖から雄大な景色を楽しむ人も大勢いる。普通はこの「立山黒部アルペンルート」の後に宇奈月温泉から黒部峡谷のトロッコ電車に乗るコースを回遊する場合が多いが、黒部峡谷の紅葉は１カ月後の１０月下旬以降になるので時期的にまだ早く、旅の続きは氷見の雨晴海岸から富山湾越しに立山の連山を眺める計画を立てた。

　水戸発７時４８分発の急行フレッシュひたち」で上野に９時１１分に着く。神田から中央線電車で新宿へ。新宿発１０時の「スーパーあずさ」で松本へ。信濃大町には１４時０５分に着いた。雲は多いが天気は良い。信濃大町では大町山岳博物館に行く予定である。駅中の観光案内所に行き、大町山岳博物館に行くバスの時間を聞いたら現在は博物館に行くバスは走っていないとのこと。山岳博物館は大町一の観光スポットだと思っていたが、それは昔のことだったらしい。(写真は信濃大町駅正面）
　
　坂の上にあるので、タクシーで行き、帰り歩くと良いとのアドバイスに従い、タクシーで博物館に行く。この博物館は今年（２０１４年・平成２６年）３月にリニューアルオープンしたばかりだそうである。入口にはカモシカの親子の像があり、館内の２階展示場にはカモシカの剥製が置いてある。（写真は大町山岳博物館入口、カモシカと鹿などの剥製がある展示室）

　小生は６０年近く前、台風一過の南アルプスの千丈岳に登った時、登山道を曲った所でカモシカが草を食べているのに遭遇したことがある。慌ててカメラを準備しているうちに気配に気付いたカモシカが急峻な崖を駈け登って一瞬のうちに見えなくなってしまった。ディズニー映画のバンビをイメージしていたので、軽快な姿ではなく子牛みたいな太った姿に幻滅を感じた思い出がある。それもその筈、カモシカは鹿の仲間では無く牛科に属しており、カモシカの様な足と言われるが、すらっとした足では無く急な崖を走り登れる太い足である。

　１階展示場に｢山岳人列伝｣として日本の近代登山黎明期の明治末から昭和初期の頃、北アルプスの近代登山隆盛を舞台裏で支えた地元地域の人びとを紹介した場所がある。その中で印象に残った人物に｢百瀬慎太郎｣が居る。百瀬慎太郎は明治２５年信濃大町に生まれた。当時の日本近代登山の黎明期に初めて山案内人組合を作って案内人の育成指導に当たった。
　また大正から昭和にかけて針の木大雪渓の下部に大沢小屋を建て、更に針の木峠に針の木小屋を建てるなどして、この地方の発展に大いに貢献した人物である。また若山牧水に師事して「山を想えば人恋し、人を想えば山恋し」との言葉を残しており、信濃大町駅頭にはその言葉を刻んだ百瀬慎太郎記念碑が設置されている。(写真は百瀬慎太郎記念碑）

　戦後の復興期に深刻なエネルギー不足に悩まされていた時、豊かな水量と大きな落差を持つ黒部峡谷に水力発電所の建設が計画され、「世紀の大事業」といわれた関西電力の「クロヨンプロジェクト」により黒部ダムが建設されたが、ダム建設地点までの資材搬送路を作るため標高2678ｍの赤沢岳直下に長さ約６ｋｍのトンネルを掘ることになった。

　その工事の時、大量の地下水と土砂が噴出する破砕帯にぶつかってしまった。しかし持てる経験と知識を結集して距離僅か８０ｍの破砕帯を７カ月に渡る苦闘の末突破して大町トンネルが開通したことにより黒部ダム建設が本格化したのである。大町市の人口は黒部ダム建設当時の昭和３５年がピークで約４万１千人だったが平成２５年には２万９千人弱と大きく減少している。ダム建設当時の喧騒が懐かしいという人も居るそうだが、今後はどの様になって行くのだろうか。

　　信濃大町には大町温泉郷という湯の街がある。この温泉郷は高瀬渓谷の葛温泉からの引湯で昭和３９年に誕生した温泉である。信濃大町駅からバスで１５分ほどアルペンラインの起点である扇沢方面に行ったところで、バス料金は大町駅から５３０円である。バス停近くの黒部観光ホテルに泊まる。じゃらんNetで予約して１泊２食付き９，２００円と割安だった。食事はバイキングだが、その場で揚げるテンプラやステーキが美味しかった。(写真は黒部観光ホテル正面付近)

翌朝、大町温泉郷８時１３分のバスに乗り扇沢に向かう。扇沢までは１，０１０円で８時４０分に到着する。扇沢駅から眺める山々はそろそろ紅葉が始まっていた。扇沢は今でこそ立山黒部アルペンルートの長野県側の出発点として知られているが、アルペンルート開設以前から現在でも針の木岳から蓮華岳、更に爺ヶ岳、鹿島槍方面への登山ルートの出発点でもある。前述した大沢小屋、針の木小屋も健在である。(写真は扇沢駅、駅から眺めた付近の山々２景)

top↑:

(以下次号）

注）　写真をクリックすると大きくなります。

イバイチの
奥の細道
　　漫遊紀行

イバイチ
　旅の小窓

イバイチ
関東・茨城散歩

イバイチ
　甲信旅巡り

 イバイチみちのく.えぞ探訪

 イバイチ
　関西の旅

 イバイチ
フォトギャラリ-