松江・出雲1

松江・出雲漫遊（１）　足立美術館

イバイチの
旅のつれづれ

　

平成２６年１１月１６日（日）～１１月１９日（水）
　第１日　茨城空港―神戸空港―米子空港―皆生温泉
　第２日　皆生温泉―足立美術館―出雲大社― 一畑薬師―島根県立美術館―松江市
　第３日　松江城―小泉八雲記念館―塩見縄手武家屋敷―由志園―
　　　　　　美保神社―美保関灯台―境港水木しげる記念館―米子市
　第４日　米子空港―神戸空港―茨城空港　
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１．はじめに

　茨城空港を利用して旅に出るのは３回目である。最初は平成２３年秋の神戸から安芸の宮島までの山陽路の旅。２回目は平成２５年クラブツーリズムのツアーで秋の小豆島から四国を巡った旅。そして今回の松江・出雲の山陰路の旅である。最初の山陽路の旅の主目的は倉敷の大原美術館に行くことだったが今回は庭園と横山大観の絵が素晴らしいという足立美術館訪問がメインで、次の目的は夕景が素晴らしいといわれる宍道湖で夕陽を見ることである。そして３番目が出雲大社の巨大なしめ縄を見て参拝することである。

　茨城空港から米子空港間は普通運賃２２，０００円(片道/１人)だが１カ月以上前のフレックス料金は８，０００円で家内と２人の往復でも３２，０００円と割安の運賃である。しかしこの便は直行では無く神戸空港で一旦降りて空港内で待ち時間を過ごすのが難点である。

　当初旅行を計画した時は神戸空港での待ち時間は３５分だったが、その後変更があって行く時は１時間１５分、帰りは２時間１０分と大幅に待ち時間が増え、しかも帰りは米子空港発９時２５分が７時３５分とこれまた大幅に早くなってしまった。神戸空港までに行く先を変更して、そこからレンタカーで行くことも検討したが、神戸空港までのフレックス料金は３ヶ月前でも９，０００円もするので当初の計画通り米子空港発着で行くことにした。

　しかしそうなると最初と最後の日は、観光には全然利用出来ないので、当初２泊の予定を３泊に変更したり、空港からレンタカーを利用する予定なので到着時間が遅くなると空港のレンタカー店に残業を依頼したり、帰りの日はレンタカー店がまだ開いていない時間なので前日に車を返して空港近くの宿を予約したりして思わぬ手間が増えた。神戸での乗り継ぎ待ち時間も勿体なかったので、直行便があれば楽で良いと思った。　（写真は茨城空港での搭乗券、神戸空港での搭乗券）

２．出発そして皆生温泉泊

　とこう(兎角)しているうちに出発の日になった。茨城空港発が１１月１６日１７時１０分発のスカイマークだが殆んど満席である。神戸空港には定刻に到着した。大部分の乗客は神戸で降りるのでそのまま出口に向かうが、米子まで行く乗客は通路の途中から２階の搭乗待合室に通される。神戸空港到着は１８時３５分だが神戸空港発は１９時５０分なので１時間１５分の待ち時間があり、そこで茨城空港で買ってきた弁当を食べた。搭乗待合室にはラウンジ神戸という休憩場所があり、コーヒーやソフトドリンクは無料とのことだが、ゴールドカードが無いと１,０３０円/人が必要という事であり入るつもりは無かった。

　出発時間近くなると神戸からの乗客が増えて、６０～７０％の席が埋まった。米子空港着は２０時３５分である。レンタカー店は２０時が閉店だが、連絡して置いたトヨタレンタカー店だけ開いていた。手続きをしてヴィッツを借りる。まる２日間で１５,１２０円である。米子空港店を１１月１６日２０時に出発して米子駅前店に１１月１８日２０時に返却する契約である。

　２１時近くに空港を出発して一番近くの温泉である皆生（かいけ）温泉に向かった。初めて走る夜道だがナビがあるので安心である。皆生（かいけ）温泉は鳥取県米子市に属している。日本海の美保湾に面しており、弓ヶ浜半島の東端にある白砂青松の美しい海岸線がある山陰最大の温泉地である。その中で皆生ホテルという朝食付き８，１００円/人の宿に泊まった。温泉の湯量は豊富で、バイキングの朝食はこの地方の料理が多く満足出来た。（写真は泊った皆生温泉のホテル、部屋からの美穂湾風景２景）

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３．足立美術館

　翌１１月１７日は９時過ぎにホテルを出て足立美術館に向かった。車で約４０分の道程である。足立美術館は日本庭園が米誌ランキングで１１年連続日本一に選ばれたことで有名である。もう少し詳しく述べるとアメリカの「Journal of Japanese Gardening」という日本庭園専門誌が、毎年全国９００ヶ所の名所旧跡を対象に日・米・豪の専門家が日本各地の庭園を調査しランキングを行っているが、昨年（2014）発表された「２０１３年日本庭園ランキング」で足立美術館の日本庭園が「１１年連続日本一」に選ばれたというもので、２位は桂離宮、３位は山梨県の常磐ホテルという所だそうである。またフランスの旅行ガイドブックである「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に２０１３年にここの日本庭園が「わざわざ旅行する価値がある」という最高評価の「三ツ星」として掲載されたという事で海外にも知られているそうである。

　美術館は昭和４５年（1970）開館の本館と平成２２年（2010）開館の新館がある。本館は１階で５万坪ある日本一の庭園を眺め、その後２階に展示してある絵画を鑑賞する様に構成されている。「庭園もまた一幅の絵画である」と当館の創設者である足立全康（ぜんこう）氏がこの美術館を開館した時に言ったそうで、当初から絵画と共に造園に力を入れていた。（写真は足立美術館本館入口、案内パンフレット）

本館入り口の手前にモミジが綺麗に紅葉している小庭があり「歓迎の庭」というのだとパンフレットに書いてあった。正面玄関に入ると直線の通路の先に庭園の一部が見える。白砂が綺麗にならされ、イブキの様な樹木がすべて丸く刈り込まれており、合間には紅葉が彩りを添えていて良く手入れされていると印象付けられる。（写真は「歓迎の庭」２景、庭園の一部）

　さらに進むと白い砂と緑の苔が対比している「苔庭」が見える。渓流の先には茶室があり、右手前には重要文化財に指定されているという十三重の塔が松林の中に見える。折れ曲がった窓の無い通路には工芸品が展示してあり、それを見ながら進むと茶室に行く通路と別れる。茶室手前のモミジもだいぶ色付いている。（写真は「苔庭」２景、茶室に向かう通路２景）

　メインの通路を行くと苔庭をバックにして右手を上げて案内する様子の創設者の足立全康氏の像が置かれており、その方向に進むと広いロビーに出て眼前に良く手入れされた「枯山水庭」が姿を現す。写真の画面中央やや左側にある立石は険しい深山をイメージし、そこから流れ落ちる滝がやがて大河になる光景であり、遠方の山が効果的な借景になっている。この「枯山水庭」は美術館の主庭で、ロビーの中央にある喫茶室から正面に見渡せるので、コーヒーなど飲みながらゆっくり鑑賞できるようになっている。（写真は足立全康氏の像、「枯山水庭」左半分、「枯山水庭」右半分）

　その先には白砂の海岸に大小の松をリズミカルに配置して描いた横山大観の「白沙青松」という作品をイメージした｢白砂青松庭｣がある。手前の池には多数の名石が置かれ、その先の白砂に多くの大小の松が植えられている。そしてそのずっと奥には「鶴亀の滝」という高さ１５ｍの滝が配されていて、「枯山水庭」と同様にゆっくりと鑑賞したくなる庭園である。（写真は「白沙青松」---複製画サンプルからコピー、｢白砂青松庭｣左半分、｢白砂青松庭｣右半分---右手上部に滝が見える、「鶴亀の滝」）

　これ以外にも見学通路に従って館内の窓をそのまま額縁にした様な「生の額絵」、床の間の壁をくり抜いて一幅の山水画が掛かっている様になっている「生の掛け軸」や池庭など見所が多い。（写真は通路に沿った庭３景）

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　｢白砂青松庭｣を最後に２階の絵画展示室に続く階段を上がる。足立美術館は近代日本画の巨匠の作品約１，５００点を所蔵している。特に横山大観の作品は約１２０点も所蔵し、質量ともに日本一として知られている。

　訪問した時は大展示室で再興院展１００年「横山大観と近代日本画の名作展」、小展示室で「うるわしき日本の女性たち」、大観室で秋の特別展示「横山大観コレクション選」という特別展が開かれていた。
　この秋季展では横山大観が昭和６年（1931）に院展に出品した｢紅葉｣という大作が大観室で毎年展示される。｢紅葉｣は大観の作品では昭和４年（1929）の作品である｢夜桜｣と共に飛び抜けて華やかな作品として知られている。（写真は作品リスト表紙）

　大展示室では大観の作品１４点を筆頭に前田青邨、安田靭彦が各３点など計３４点、小展示室では伊東深水が５点、鏑木清方が２点など１５点、大観室では｢紅葉｣の他に大観の作品１７点が展示されていた。足立美術館ではホームページ、パンフレットなどすべての画像について無断使用・転載禁止というので、この写真は模写業者のカタログから転載した。（写真は｢紅葉｣、｢夜桜｣）

　正面玄関から向かって右側に陶芸館があり河井寛次郎と北大路魯山人の作品が展示されており、また新館に行く地下通路がある。新館には現代日本画家の作品約２００点を収蔵、展示していて西田俊英などの見応えのある絵も多かった。
　足立美術館では将来性のある日本画家育成のため毎年の院展に「足立美術館賞」を設けている。これは平成７年から同じく院展に「天心記念茨城賞」を提供してきた茨城県の姿勢と相通ずるものがある。（写真は足立美術館新館）

　茨城県は横山大観生誕の地であり、岡倉天心が日本美術院再建を図るため、現在の北茨城市五浦（いずら）に横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山を呼び寄せ、新しい日本画の創造を図った場所を持つ県である。現在その地には「天心記念五浦美術館」が開設されている。

　茨城県では水戸に茨城県近代美術館があるが、北茨城市に分館として茨城県天心記念五浦美術館があり、横山大観をはじめとして五浦で制作に励んだ四名の作品をはじめ再興日本美術院の日本画を多数所蔵し、展示している。また院展の巡回展が隔年で開催されており、今年（2015）２月２８日から１ヶ月間「再興第９９回院展茨城五浦展」が開催される。
　また笠間市には茨城県陶芸美術館がある。これらはすべて公立だが、他に笠間市には日動画廊の長谷川仁・林子夫妻が創業した笠間日動美術館があり、地方にしては比較的恵まれた環境にあると思っている。特に公立の美術館は７０才以上の高齢者は無料というのは大変有難い。

　中国地方には山陽の倉敷に大原美術館という素晴らしい美術館があり、平成２３年秋に訪れた。ここは洋画が中心であり洋画の山陽の大原美術館、そして日本画が中心の山陰の足立美術館と、ここ３年の間に是非見たいと思っていた両者の美術館に行けたことは望外の喜びであり、茨城空港開港の恩恵をもろに受けたと思っている。

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(以下次号）

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