尖石縄文考古館・御射鹿池
平成28年(2016)5月、八ケ岳高原道路から八ケ岳エコーラインなどに乗り継いで
蓼科高原に近い尖石(とがりいし)縄文考古館に行く。
ここには、知る人ぞ知る国宝の「縄文のビーナス」と、
同じく国宝の「仮面の女神」と呼ばれる土偶がある。
縄文考古館は激しい雨の中だった。
「縄文のビーナス」は昭和61年に完全な形で出土したもので
、八ヶ岳山麓の縄文時代中期の特徴を良く表しており、
造形的にも優れている等により、平成7年縄文時代の遺跡から見つかった物の中で
初めて国宝に認定された。
(下の写真は「縄文のビーナス」の正面と側面)
「仮面の女神」は平成12年に出土した今から4000年も前の縄文後期の仮面の表現を持つ
顔面に逆三角形の仮面をつけた表現の土偶であり、平成26年に国宝に指定された。
(下の写真は「仮面の女神」の正面と側面)
ここの遺跡には、他にも立派な縄文土器が展示されていた。
蛇体把手付き深鉢土器は茅野市役所の噴水のモデルになった土器だった。
他にも大きく立派な深鉢土器など見ごたえがあった。
雨が小止みになったところで、八ケ岳エコーラインに戻り、
メルヘン街道と呼ばれる国道299号線と交差する手前にある
湯道街道という奥蓼科温泉郷に通じる曲がりくねった道を進むと、明治温泉に着く。
その手前に御射鹿池(みしゃかいけ)という溜池がある。
この池は日本画家東山魁夷が昭和57年(1982)に製作した「緑響く」という作品のモチーフになった場所で、
2008年に「シャープAQUOS」のテレビCMで吉永小百合が白馬と共に出演して話題になったことで知られている。
東山魁夷はこの作品について「一頭の白い馬が、緑の木々に覆われた山裾の池畔に現れ、
画面を右から左へと歩いて消え去った。??? そんな空想が私の心の中に浮かびました。
私はその時、なんとなくモーツアルトのピアノ協奏曲の第二楽章の旋律が響いているのを感じました。
穏やかで、控えめ勝ちな主題がまず、ピアノの独奏で奏でられ、
深い底から立ち昇る嘆きとも祈りとも感じられる
オーケストラの調べが慰めるかのようにそれに応えます。
白い馬はピアノの旋律で木々の茂る背景はオーケストラです。」
と書いている。なんとまあロマンチックで夢幻的な感想であろうか!
御射鹿池(みしゃかいけ)の水質は強い酸性で、水生生物は生息しにくいので、
澄み切った水が保たれているということもあり、写真愛好家が多く訪れる。
丁度霧がかかってきて水際以外はほとんど見えなかったが、
しばらく待っているうちに少しづつ晴れて対岸が見えるようになってきた。
静かな湖面に森の影が映り、静寂そのものの感じだった。
霧はしばらく濃くなったり、薄くなったりして続き、湖面に映る木陰も光と霧の加減で、
いろいろな変化のある色を見せてくれた。
晴れた日とは異なって奥行きのある景観を堪能して池を後にした。
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