ロンドン

ヨーロッパ周遊１２日間　　（１．ロンドン ）

イバイチの
旅のつれづれ

　　　　　　　　　　
　ロマンチック街道とスイスアルプス、
　　　　　　ロンドン・ローマ・パリ　１２日間

　　　第１日目　成田→ロンドン　　（飛行機）
　　　第２日目　市内観光　バッキンガム宮殿、
　　　　　　ナショナルギャラリー　
　　　　　　　(貸し切りバス）
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１．プロローグ

　今から２０年前の平成５年（１９９３年）のことである。この年、６０歳の定年を迎えるので、その記念に妻と二人で海外旅行をしようと考え、日本交通公社（ＪＴＢ）の｢たびたび｣という旅行積立システムにその４年前の平成元年（１９８９年）に申し込んだ。

　当時、旅行積立システムは近畿日本ツーリスト，日本旅行などでも扱っていたが、３年以上の長期積立は交通公社だけだった。積立利回りが大きいため経営基盤の良い交通公社以外では長期の負担が大きすぎると考えたのだろう。事実、契約した｢たびたび｣は４５ヵ月（１万９，５９４円／月）８８万１，７３０円の支払で１００万円の旅行券が受け取れることになっており、１１万８，２７０円のサービスだった。

　旅行券で受け取れることは魅力の一つである。これが現金だったら定年で以後の収入が予測出来ないため、旅行に行かず今後の生活費に当てたいなどと考えることもあろうが、旅行券ではそうはいかず必ず旅行に行くことになるのが良い。また毎月２万円弱の支出は働いていればあまり負担にならないと思った。つまり６０歳の定年になったら自動的に１００万円の旅行券が手に入ると云うことで申し込んだのである。

　昭和５４年から５５年にかけて、アメリカ西海岸へ仕事で出張して１ヵ月半ほど滞在したことがあるため、今回の旅行はヨーロッパと最初から決めていた。海外には絶対行きたくないと主張していた妻も、何回か話をしているうちにそれでは一回だけと同意した。

　最初はヨーロッパ周遊２週間から３週間を想定していたのだが、旅行会社のカタログを見ると一人７０～１００万円かかるようになっており、これではとても思ったところに行けそうもない、どうしようかと考えていた頃、新聞にＪＴＢ旅の通販センター「旅物語」カタログ進呈と云うのが全頁広告で載っていたのでそれを請求した。見てみると店頭のカタログより３０～４０％少ない費用で行けるコースが数多くあり、喜んで早速内容の検討を始めた。

　実は是非行きたいところとして、パリのルーヴル，マドリードのプラド，ローマのヴァティカンの各美術館とスイスアルプス見物を、また時期は５～６月を考えていたが、費用，行先，日程すべてを満足するうまいツアーがなく、比較的条件があっていた「憧れのロマンチック街道とスイスアルプス，ロンドン・ローマ・パリ１２日間の旅」に決めて、平成５年（１９９３年）３月９日に申し込んだ。

このツアーはマドリードには行かず、美術館もコースには入っていないが、ロンドン，パリで半日の自由時間があり美術館めぐりができそうに思えた。出発日は平成５年５月１２日である。旅行代金は申込み直前に円高が進み、通常４３万８千円のところ４２万８千円になり１万円の値下げがあった。

　いざ行くとなるとパスポート取得やスーツケース購入から始まり、ショルダーバックの鍵が壊れていて新しい鍵に付け替えたり、案内書や４ヵ国会話の本などの購入，替え着や雨具の取り揃えなど慌ただしい準備が続いた。丁度ナショナルからパットルという小さく手軽な７万円台のＶＨＦ－Ｃのビデオカメラが発売されたのでテープ９本と共に揃えた。また５万円分をフランスフランのトラベラーズチェックにして土産代の準備とした。

　カメラはキャノンのＥＯＳ６５０とバカチョンの２台、ヨーロッパはまだ寒いだろうと半コートも購入する。ＪＴＢからガイドブックや旅のしおりなどが届き、細かい毎日のスケジュールを見たりしていると、いよいよヨーロッパ旅行に出かけるのだと気持ちが昂揚する。４月１０日には「青春十八切符」を利用して成田山新勝寺に道中安全祈願のお参りすると共に成田空港の下見に行った

２．出発前夜そしてフライト

５月１１日（火）
「憧れのロマンチック街道とスイスアルプス，ロンドン・ローマ・パリ１２日間の旅」ツアーに申し込んで２ヵ月が経過し、いよいよ５月１２日の出発間近になった。成田空港に朝９時集合と云うことなので当日家から重いスーツケースを持って行っては間に合わないと思い前日に行くことにした。空港付近のホテルを調べたらＡＮＡホテルは２週間無料駐車サービスすると云うのでＪＴＢに申し込む。ところが２週間駐車サービスはハネムーンプランだけと云うので奮発してハネムーンプラン、ルームチャージ２万８，８００円のコースを申し込んだ。

　午後１時４０分、当時住んでいた茨城県ひたちなか市の家を出発し東関東自動車道を通り、午後４時３０分頃成田ＡＮＡホテルに着いた。ホテルの前が駐車場になっている。ハネムーン用のデラックスツインと云うのでさぞ豪華な部屋だろうと期待していたのだが思ったほど上等な部屋ではなかった。日本食はしばらく食べられないので夕食は一人当り６千円の和食コースにする。ハネムーンプランのプレゼントとしてソーイング（縫物）セットとドリンクのサービス券が貰えた。そのサービス券で、食後最上階のバーで空港の夜景を眺めながらひとときを過ごしたが、結局ドリンク追加などでだいぶ高上がりになってしまった。後から考えると宅配サービスで前々日に荷物を送り、前日電車で行った方が安上がりだった。

５月１２日（水）
成田エアポート９時集合なので８時２０分のシャトルバスでホテルを出た。１０分ほどで第一ターミナルに到着する。８時４０分に指定された特設団体用のＧカウンターと云う集合場所に行くともう添乗員の人が来ていた。早速トラベラーズチェック，ステッカー，タッグなどを受け取る。更に空港使用料各２千円を払いスーツケースを預け、出国手続，所持品検査を経て慌ただしく機上の人となった。１１時発予定の英国航空機ＢＡ００６便である。３－４－３の座席配置のジャンボ機で窓際の席を望んでいたがそこは取れず隣の２席になった。

　いよいよヨーロッパに出発すると思うと緊張する。１０時３０分に搭乗し１１時３０分に定刻より３０分遅れて出発した。日本海が悪天候のため遅れたという。しかしあまり揺れずにすぐソ連上空になり、早速飲物と昼食が出た。飲物はワインを頼んだ。やることがないせいか時間の過ぎるのが遅い。眠ったり音楽を聞いたり、食べたり飲んだりしていたがワイン２本目を飲んだら頭が重くなり暫く寝る。着陸する頃やっと酔いも眠りも醒めた。

　今回のツアー参加人員は２７名でそれに添乗員を入れて合計２８名の団体である。その内新婚旅行が２組あった。出発前、娘が勤務している会社の人が結婚してヨーロッパにハネムーンに行くので、もしかしたら会うかもしれないよと言われたが、妻が新婚のひと組に出身地を聞いたら茨城というので勤務先を聞くと、本当に娘が話していた人で思わぬ偶然に驚いた。

３．初めてのヨーロッパ　ロンドン

　１２時間のフライトでロンドンヒースロー空港にほぼ定刻通り到着した。入国手続も無事に済み、いよいよイギリスの地に降り立った。現地の女性ガイドが迎えに来てくれていた。空港で１万円を両替し、時差を合わせるため時計の針を８時間遅らせた。到着時間は現地時間で１５時３５分である。良い天気で太陽がまぶしい。初めてのヨーロッパに妻も昂奮してか、いつもより口数が多い。

　専用バスでホテルに向かう。イギリスは左側通行で違和感は少ないが街の家並みは日本とはだいぶ違う。しばらく走って今日と明日泊まるフォーラム・ホテル・ロンドンという２０数階建ての大きなホテルに着いた。部屋に入ったら日本では夕方の筈なのにまだ日が高く日差しがまともに入り暑い。１９階の部屋なので眺めが良く、近くのアパートメントの屋根や教会の塔、更に遠くのビル街まで見渡せた。（写真はフォーラム・ホテル・ロンドンの入口付近、１９階の部屋からの眺め２景）

　洗面所の蛇口がガタガタ動いて取れそうになり水が出ないので、添乗員に連絡して体格の良い男性に修理に来て貰ったが、ガタガタ動く蛇口をぐっと引っ張り上げると蛇口が取れるどころではなく水がジャーッとでてビックリした。妻は洗面所が高過ぎて背伸びしないと顔が洗えないと言う。彼我の体格の差を痛感した。

　日がなかなか暮れず近くの商店街をぶらぶら散歩し、スーパーに行き、缶ビールとサラダなどを買った。英語の国なので安心である。部屋に帰って何はともあれ無事ヨーロッパに着いたと乾杯する。夜１０時頃やっと暗くなり、ロンドンの第一夜が更けていった。（写真は近くの商店街）

５月１３日（木）
　朝４時３０分目が覚める、時差のせいか早い目覚めだ。朝食はコンチネンタルブレックファストと云うパンとジュース，コーヒだけの簡単なものだった。午前中は専用バスで市内観光をする。王室ご用達で壁面に紋章を飾るハロッズ・デパートやピカデリーサーカス，四頭の獅子の像とネルソン記念碑のあるトラファルガー広場などを通り、テームズ川のほとりで下車して国会議事堂を川越しに眺める。日が翳っていたせいかビッグ・ベンをはじめとする建物はくすんだ色で重厚な感じだった。市内には名物の赤塗りの二階建てバスがいろいろな広告の看板をつけて沢山走っている。（写真は二階建てバス、ハロッズ・デパート、トラファルガー広場、ビッグ・ベン、ウエストミンスター橋とビッグ・ベンの夜景絵葉書）

　次にウエストミンスター寺院で下車し沢山の観光客に押されながら中に入った。ここにはシエクスピアやバイロンなどの著名人も埋葬されているが、日本の寺院と違って通路の下に墓があり石畳に埋葬されている人の名前が刻まれた碑が埋め込まれている。多くのひとに踏まれると現世の罪業が消えて天国に行けると云うことなのだろうか。それにしても沢山の墓の上を歩き、また歴代の国王の彫刻を施された石棺の傍で長年のイングランドとスコツトランドとの凄まじい対立の歴史の説明を聞くと、日本人と違った習慣や、民族間の執念深さに驚かされる。（写真はウエストミンスター寺院前と全景絵葉書）

　正午にバッキンガム宮殿の衛兵交代の儀式があると云うので暫らく待機して、その黒いもしゃもしゃした帽子と深紅の上着を着た制服の近衛兵が馬上豊かな士官に引率されて交代する様子を間近に見た。そのあと免税ショップのハウスオブハノーバーに案内される。前から欲しいと思っていたロイヤルドルトンのティーカップ２客とウエッジウッドのピーターラビットのプレート５枚を買う。　ＪＣＢカードで支払うと記念品を貰えると案内書にあったのでその話をするとピーターラビットの絵が書いてある石鹸をくれた。（写真はバッキンガム宮殿から出てくる交代の衛兵たち４景）

　昼食は中華料理で、紹興酒を飲みながら食事をした。そこから自由行動になり近くのビクトリヤ駅から地下鉄に乗りナショナルギャラリーの絵を見に行くことにしたが、地下鉄の入り口が判らずウロウロする。また地下鉄であちこち行こうと思っていたので割安な一日券の切符を買うことにしていたが、どう言えば良いのか判らずまたしばらくウロウロする。

　やっと "ｏｎｅｄａｙｔｉｃｋｅｔＮｏ.１ａｎｄＮｏ.２ｚｏｎｅ２ｔｉｃｋｅｔｓ,ｐｌｅａｓｅ．”と云えば良いことがわかり買えた。車両は思っていたよりずっときれいだった。グリーンパーク駅での乗換えも判り易く、直ぐに目的のチャリングクロス駅に着いた。

　駅から出たところがトラファルガー広場である。ナショナルギャラリーは広場の向い側にあり、石造りの堂々たる建物である。入場は無料で誰でも簡単に入れるようになっている。天井が高く広々とした展示ホールには　フェルメール，レンブラント，ルーベンス，コンスタブルから　ターナー，モネ，ルノワール，ゴッホ，セザンヌなどの巨匠の絵画が無造作に置かれているが、観客はあまり多くなく日本では考えられないほどゆったりした気分に浸りながら鑑賞できた。（写真はトラファルガー広場とナショナルギャラリー、ナショナルギャラリー入口付近、ゴッホのひまわり絵葉書、ルノワールの雨傘絵葉書）

　なかでも　フェルメールの「ヴァージナルの前に立つ少女」は柔らかく落ち着いた色調で、じっと見ていると心が休まるような絵であり、いつまで見ても飽きることはなかった。　また美術解説の本には必ず載っている　ヤン・ヴァン・エイクの「アルノルフィニ夫妻像」が８０ｃｍ×６０ｃｍの小品だったのは予想外の事で、実物を見るまでは少なくても１ｍ以上の大きさの作品だと思っていた。
（写真はフェルメールのヴァージナルの前に立つ少女、ヤン・ヴァン・エイクのアルノルフィニ夫妻像）

　コンスタブルの風景画の大作「干し草車」「牧場から見たソールズベリー大聖堂」が並んで展示してありその牧歌的風景は沢山の人物が多い絵画を見たあとにあったのでほっとする感じを受けた。ターナーの部屋には「雨、蒸気、速度」など以前東京の展覧会で見た作品が多くあり懐かしく眺めた。ターナーの作品はテイト・ギャラリーに全部行ってしまったと思っていたので一寸意外な気がしたが嬉しかった。（写真はコンスタブルの干し草車）

　ほかにもセザンヌの「大水浴」，スーラの「アニエールの水浴」などの有名な絵画の前にも人影は少なく、部屋の中央の長椅子に腰掛けてゆっくり鑑賞出来るほど空いていた。ギャラリー全体の建物も宮殿のように天井，柱などに模様があり、豪華な雰囲気だ。また模写をしている人が３人、中高校生くらいの男女生徒を１０～１５人位引率して説明しているグループが２組見受けられ、これも日本とはだいぶ違うと感じた。（写真はセザンヌの大水浴絵葉書、スーラのアニエールの水浴絵葉書）
　午後１時頃から３時半頃までゆっくりと沢山の絵画を見て、名残惜しくトラファルガー広場に出る。太陽が出て暖かく気持ちよい天気になり広場の中央にある噴水や、日本橋三越のモデルのなっている４ヵ所の獅子の像の付近には鳩が飛び交い、日本と同様に親子連れの市民，旅行者たちが写真を撮ったり散歩したりしており、たちまち喧騒の現実に引き戻された。

　そこからピカデリーサーカスで乗換えてオードリー・ヘップバーンが主演した映画「マイ・フェア・レディー」のロケ地にもなったショッピングセンターが多くあり観光客に人気のあるコベントガーデンというショッピング・エリアに行くつもりだったが、妻が疲れたというのでグロウセスターロード駅からホテルに戻った。折角一日券を買ったのに残念だった。駅を降りてホテルに行く途中、郵便局を探して日本までの航空便の３３ペンス切手を買った。

　近くのスーヴニール店でキーホルダーと絵はがきを買う。部屋に戻ったが食事まで時間があったので、スケッチブックを取り出して１９階の窓から見える教会と付近のアパートメントの風景を鉛筆でスケッチをした。教会付近は新緑の木々が多くありさわやかな印象である。夜食はホテルのローストビーフ料理でビールを飲んだが特に旨いという料理ではなかった。

　ロンドンの印象は年代を経た建築物や入国時の几帳面な取扱に象徴されるように一面では重厚で堅苦しい感じだった。しかし美術館が無料だったり地下鉄がきれいに整備されていたり、ハイドパークなどの公園や街角の木々の緑が多いことなどを見ると住み易い街のようにも感じる。そしてちゃんとしたキングズイングリッシュが通じることは何となく安心感がある。また２日間とも素晴らしい青空に恵まれ、陰欝で冷たい雨の降る霧の街ロンドンの面影はなく、明るいからっとした街との感じも受けた。そしてとにかく暑かった。

（以下次号）

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２.秋のカナダ

３.スペイン紀行

4．香港・マカオ
　　　　　　　紀行

5．ヨーロッパ
　　周遊12日間
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②ローマ
③ドイツ
④ドイツ②
⑤スイス
⑥パリ
⑦パリ②

６．アメリカ西海岸

 ７．ハワイオアフ島

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