奥秩父主脈縦走 イバイチの
旅のつれづれ

奥秩父主脈縦走

  前回(H24年4月)、今から54年前の昭和33(1958)年に南アルプスの仙丈ヶ岳,甲斐駒ヶ岳,鳳凰三山を縦走した思い出を書いたが、今回は同じ年に奥秩父に行った思い出を当時書いたメモと古い写真をもとに再現してみたい。

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 昭和33年4月29日〜5月3日のゴールデンウィークを利用して後輩のS君と奥秩父雲取山から甲武信岳,金峰山,瑞墻山への縦走をした。奥秩父の山小屋は寝具があるのは雲取山の家だけであり、また食事はどこも自炊なので、シェラフと食料,コッヘルをリュックに詰め込み、更にまだ雪が深いかもしれないと輪かんまで持って出掛けた。


 ケーブルカーで三峰神社まで行き、そこから歩き始める。金峰山までの縦走の計画なので荷物が多く、リュックが肩に重く食い込み白岩山の急登はこたえた。夕方雲取山の家に着いたときはヘトヘトになった。(写真は三峰神社拝殿と雲取山頂から眺めた奥秩父の山々)

 翌朝は晴れ。同じく金峰山まで縦走するという4人組のパーティーと同行することにした。山の家から雲取山頂(2,017m)までは30分である。眺望を楽しんだ後将監峠に向かった。 奥秩父の山は原生林に覆われていつでもじめじめした薄暗い苔むした小径を踏み締めて行くイメージがあったが、そのイメージ通り青森トド松の林がどこまでも続き、残雪が豊富に残る縦走路は所々倒木が径をふさいでそこから新しい苗木が育っていたりしている。(写真は将監峠への縦走路)

 初日のような急坂は少なく緩やかな登り降りを繰り返し、大洞山などのピークをいくつか過ぎて前方が開けたところが将監峠である。いかにも奥秩父らしい静寂に包まれた峠である。峠から縦走路を更に進み唐松尾山,笠取山(1,941m)を過ぎ大菩薩峠,柳沢峠方面への径を下ると落葉松林の奥に今宵の宿笠取小屋が現われた。

 翌朝はすっかりガスに包まれた中を出発する。縦走路に戻って直ぐ草原状の雁峠だが一面のガスで何も見えない。燕山,古礼山と原生林の径を行くうち天候も回復してきた。やがて林が無くなり笹とカヤトの明るい草原に出ると雁坂峠(2,082m)である。すっかり晴天になって甲州側は大きく眺望が開け、前方には山並みを隔てて富士山が秀麗な姿を見せた。右手には金峯,国師の奥秩父南部の山々、左手には大菩薩嶺を見渡せ、その素晴らしい展望を楽しみながら暫しの休憩をした。写真は雁坂峠からの富士と金峯,国師方面の山々)

 やがて甲武信小屋を目指し相変わらずの原始林の雪の中の径を進む。途中、破風(不)山(2,317m)から甲武信岳が望めた。小さな丘の様で甲州(笛吹川),信州(千曲川),武州(荒川)の分水嶺と云う名前の割に見栄えがしないが、拳(こぶし)から名付けられたとの説もあるそうでなるほどと思わせる可愛らしい峰頭である。甲武信小屋は全面改築したばかりで大きな窓のある気持ちの良い小屋だ。早速夕餉の用意だが、残雪が多いので遠い水場まで汲みに行かずに済むのは有難い。(写真は雪の斜面、破風山からの甲武信岳(左側の鞍部)、甲武信小屋とその周辺)

甲武信岳(2,460m)に登り、そこから長大な尾根を国師岳に向かう。奥秩父中最も標高が高いコースで雪が多く残り、馬鹿尾根の異名の通り長く険しい樹林の道をくたくたになって歩く。今日は天気が悪く、やっと国師岳(2,591m)に着いた頃は雪になってしまい、間近の金峯山を始めとして素晴らしいと云われる展望は見られなかった。朝日岳(2,581m)を過ぎて金峯山に近づくに連れて雪は止み、前方が見えるようになってきた。這松が姿を現わして、奥秩父ではじめてアルペン風の山容が見られた。(写真は甲武信岳山頂からの眺め、朝日岳と五丈岩のある金峯山、這松のある縦走路)

 金峯山(2,595m)のシンボルである巨大な五丈岩が雪原の彼方に王者の偉容を現わしている。もう夕刻近くなり早々に山頂を降り大日岩の下にある大日小屋に急いだ。しかし小さな小屋は満員で入ることも出来ず、更に先の富士見平まで降りたときは皆疲れ果ててグロッキーになってしまった。(写真は五丈岩と富士見平での一行)

 此処は明日登る予定の瑞牆(みずがき)山への分岐点であり、また薄暗くなってきたので此処で野宿をしようか、それともこの下の金山まで降りようかと議論をしたが、テントが無いので降りるしかないと云うことになり足取りも重く歩き始めた。しかし直ぐに無人の人夫小屋を発見し、これは有難いと其処で泊まることになった。まだ富士見平小屋など無かった頃の話である。

 翌朝は晴天だった。白樺林の中で朝飯の用意をし、奥秩父縦走の最期を飾る瑞牆山に向けて出発した。思えば瑞牆山には5年前のゴールデンウイークに信州峠から木賊(とくさ)峠を経て昇仙峡に降りたとき登る予定だったが、雪が多く登頂を果せなかった山である。遠くから見ると岩だらけの山だが登山ルートはよく整備されており割と楽に登れた。残念ながらガスが出てきて眺望は臨めなかったが、瑞牆山頂(2,230m)に立った時は改めて一つの山旅が成し遂げられたとの感慨が込み上げた。やがて金山から増富に降り、韮崎へのバスに乗って4泊5日の奥秩父主脈縦走の山旅は終わった。

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1白根三山縦走

2裏銀座,槍穂高
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3尾瀬から
   会津駒へ


4後立山縦走


5仙丈,甲斐駒,  鳳凰

6奥秩父主峰縦走

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