土浦花火競技大会を見る イバイチの
旅のつれづれ


 茨城県土浦市では、毎年10月の第一土曜日に土浦全国花火競技大会を開催している。これは秋田県大仙市の大曲全国花火競技大会と並ぶ日本有数の大きな花火競技大会である。今回(平成23年)は東日本震災復興祈願第80回記念大会と銘打って10月1日(土)に開催された。

 毎年観客が80万人以上集まるとかで、そんな混雑するところにはわざわざ行くことは無いと今まで殆んど関心が無かったのだが、娘婿が仕事の関係で桟敷席を一桝確保できたので一緒に行かないかと誘ってくれた。花火は水戸市の千波湖の花火が自宅から見え、昔は近隣のひたちなか市や大洗町の花火も見に行ったのだが、最近は音を聞くだけで見に行くことは無くなってしまっていた。

 水戸からJRで土浦に行きバスで会場まで行くのも大変だし、まして80万人の人出だというので腰が引けたのだが、水戸千波湖の花火が4千発に対して2万発と5倍も多く、桟敷席の値段も1桝4〜6人入れて19,000円と随分高いが、それも競争が激しくなかなか取れないと聞いたので一生に一度くらいは話のタネに見ておくかと重い腰を上げ、娘夫婦と孫二人の5名で行くことになった。

 花火の開始時間は18時ということなので、その2時間前に水戸駅から電車に乗ればいいだろうと思ったのだが,水戸駅では拡声器で「土浦花火に行く人は帰りが混雑しますので、往復乗車券を購入してください」と繰り返し放送しており、ホームの人波も増えてきていた。電車の中も満員であり、成程すごい事なのだなと思い始めた。

 土浦駅に着くと雑沓する人波を大きな案内看板で「土浦花火シャトルバスの乗車券販売はこちら」と表示した案内が沢山置かれており、駅構外の向かって左側(西側)から正面入り口を過ぎて駅の東側まで列がずっと続いている。更にバス専用道路の下の道を中央広場に向かって迂回したところに何カ所か乗車券売り場が並んであった。そこで一人460円で往復の切符を購入すると、その少し先の乗車口にシャトルバスがひっきりなしに到着して客を運んでいく。その間人波がとどまることなく流れるように進んで行き、さすがに今年の80回記念までの長年にわたる経験がものをいっていると感じた。

 シャトルバスは専用道路を10分ほど走ると桜川沿いの花火会場に着く。会場近くなると、一面の河原にもう沢山の人が青いシートを敷いて見渡す限りに溢れている感じだ。ただ花火を見にくるのではなく、1日がかりの行楽を楽しもうとする雰囲気がある。

 バスを降りるとすぐ河原に2〜3メートル高く作られた桟敷席がある。桟敷席を購入した人は首からナンバーを記入したカードをぶら下げることになっているので、係の人が手際よく一般の人と分けて誘導してくれる。開始30分くらい前に席に落ち着き、娘夫婦は飲み物などを買いに出かけた。秋の日は直ぐに暮れて行き夕闇が迫ってくる。さいわい雲は殆んど無い晴天である。

 土浦の花火は全国花火競技大会と言い、スターマイン、10号玉、創造花火の3部門で全国の花火師が集まって優勝を争う競技会で、その中の最優秀作品には内閣総理大臣賞が贈られる権威のある大会である。昨年の79回は茨城県の山崎煙火製造所というところが内閣総理大臣賞を受賞した。しかしその前の77回、78回は連続して同じ茨城の野村花火工業が受賞している。76回は山梨県のマルゴーが受賞しており、過去10年間はこの3社以外は受賞しておらず、特に野村花火工業は6回受賞と際立った実績がある。

 この様なことは大会公式パンフレットに書いてあるのを写したもので、花火には門外漢の筆者がわかっている筈もない。だいたいスターマインは何かも判らず、インターネットで調べて「速射連発花火」というもので、音楽に合わせてあるストーリーを持って連続に打ち上げる花火のことだと始めて知った。因みに10号玉というのは昔の尺玉のことで、直径約30cmで約330mの高さで開花直径が280mの花火である。そして一発の花火の中に何回も色が変わったり、形が変わったりする状況を競い、花火の形状、真円度などの完成度が審査の対象になる。創造花火は花や三角錐などの立体を表現したりして、その独創性を競う花火である。最近はその豪華さや華やかさなどで群を抜いているスターマインが競技花火の主導権を握っているようである。

 今回の花火大会は初めに東日本大震災慰霊花火として8号玉が5発打上げられた。次に審査標準玉として「昇曲導付八重芯変化菊」という10号玉が打上げられた。この「昇曲導付(のぼりきょくどうつき)」というのは親花火の上部に小さな花火が取り付けられて花火が打上げられた時に小花が咲いたり、枝が飛び出したりしながら昇って行くことで、「八重芯」とは本来の花火の芯の内側に更に2重の芯があり、全部で3重の同心円になっている花火のことであり、「変化菊」とは色が何回か変わり菊花の紋を描く花火ということなのだそうである。

 10号玉には全てそのような名前が付けられていて、「昇曲導付三重芯紅煌星」というのは芯が三重に出て、親星は開いてから紅色のきらきらになる花火。「三重芯紅点滅波紋の華」というのは紅の点滅が内から外に波紋のように広がる三重芯花火ということである。


 打上げが始まってから一時間ほどして土浦市長の挨拶があり、その後ワイドスターマイン「土浦花火づくし」という広い範囲から一斉に花火が連続して上がるド派手な花火が上がり観客の目を奪った。打上げは20時30分まで続き、テレビではNHK茨城で放映したので茨城県近辺で見られた方も多いと思う。解説の人は野村花火工業や山崎煙火製造所の花火は細部までこだわってきめ細かく、且つ花火に品格があるということを言っていた。家に帰って録画してあったものを見直すと成程上位入賞する花火師たちのものは見応えがあるものばかりだった。

 今年の内閣総理大臣賞はスターマインと10号玉の両方で優勝した野村花火工業が2年ぶりに獲得した。そのスターマインは「夜空のウェディング」という題でシューベルトのアヴェマリアの曲に乗って、新郎新婦の入場から指に輝くリング、祝福の鐘の中を最後にパステルのブーケが大空に輝くというストーリーで花火の開き具合と音楽が良くマッチし観客から大きな拍手を浴びていた。

山崎煙火製造所は「I miss you…」という題で徳永英明のレイニ―ブルーという曲に乗って、青い花火であなたの心を癒し、疲れた体を包みたいというテーマの青色にこだわった花火を上げていた。

 とにかく発射口の間近で60〜70度の角度で大空一杯に拡がり、音楽と共にいろいろな形状の色彩豊富な花火が打上げられるのを見るのは初めてであり、花火の打上音、音楽の響き、観客の歓声や拍手などの中でビールを飲みながら夜空に咲く色とりどりの花火を見上げて過ごすのは至福のひとときだった。

 しかし時間は瞬く間に過ぎて、最後にスターマインの上位入賞の常連である長野の紅屋青木煙火店の「日本に絶えざる光を」(本年準優勝)、山梨のマルゴー(第73回優勝)の「望郷」、群馬の菊屋小幡花火店「星空に願いを込めて」(本年度特等)の3店のスターマインが打上げられた。

 その後のエンディング花火として7号玉80発が打ち上げられているさなかに急いで帰宅の途につき、桟敷席はバスの乗車地点に近いという利点もあって余り混まないうちに土浦駅から電車に乗れた。デジカメで写真を沢山撮ったのだが良い写真は少なかった。後から調べたら花火は夜景モードだけではまずく、露出時間を3秒から5秒にセットして写さなければいけないことが判ったのだが後の祭りだった。

 スターマインのような速射連発花火は写真ではうまく表現できず、ムービーでなくては再現出来ない。You Tubeを見ると土浦の花火も沢山載っているので、本物とは較べられないが雰囲気は判ると思う。

(H23-10-1訪)

 
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