弘前2

冬の青森・弘前 (4) 　 雪の弘前城公園　

イバイチの
旅のつれづれ

１０．弘前公園

　冬の青森･弘前の旅も最終日である。「大人の休日倶楽部会員パス」を申し込む時に「びゅうばす青森･弘前号｣と共に「ガイドと巡る弘前市内散策(レストラン山崎での昼飯付)」を申し込んだので、集合場所の弘前市立観光館に急いだ。市立観光館には弘前ねぶたが展示してある。コインロッカーに荷物を預け、インターネットで調べておいた観光客用無料長靴を借りた。雪国の観光には長靴は欠かせないアイテムなのである。

　今日も例によって一人だけの顧客である。観光ボランティアガイドと挨拶を交わして出発した。弘前城の表門に当る追手門から公園内に入る。昨夜も雪が降り追手門にも一段と雪が積もった様子である。道路の両側にある桜並木の枝にも雪が積もり、花のトンネルならぬ雪のトンネルに化している。

　間もなく前方に櫓が見えてくる。辰巳櫓である。弘前城は外濠、中濠、内濠と三重の堀が巡らされていて外濠の南側の入口が追手門であり、北側の入口が北門(亀甲門)、東の入口には東門と三つの門がある。中濠を渡ると二の丸であり、北西を除く三つの角に櫓が置かれ東南方面の押さえが辰巳櫓で、他の二つは南西の未申櫓と北東の丑寅櫓である。(写真は辰巳櫓）

　二の丸入口には追手門口からの南内門と東門口からの東内門がある。道は左折し更に右折して中濠に架かる赤い欄干の杉の大橋を渡ると、左側に未申櫓が見え直ぐ南内門にさしかかる。門を過ぎると道幅が広くなり、やがて内濠に架かる赤い下乗橋の欄干が見えてくる。その先に本丸天守閣があるのだが太い桜の木々が多くあってまだ見えない。（写真は杉の大橋、未申櫓、南内門）

　弘前公園にはソメイヨシノを中心に２千６百本の桜があるという。ソメイヨシノの平均寿命は６０年から８０年といわれているが、ここには１００年以上の樹齢のものが３００本以上あるのだそうである。その理由をボランティアガイドの人は話してくれた。それは枯れ枝や病気の枝を切り落とし、接木をするのだそうである。接木をすることにより新しい若枝が伸び、地下から水を多く吸い上げるので、古い枝の方にも栄養が行き渡り樹木全体が再び活性化するので樹齢も伸びるというのである。
　歩きながらこの木も、この木もそうだというのでよく見ると、成程明らかに樹肌が若々しい直径１０センチぐらいの若枝が伸びているのが判る。この公園には桜の世話をする庭師が３０人ほど居るが、一人１日に１本しか作業が出来ないので、１月から桜祭りのために枯れかけた枝や密集した枝を切り落としたりして枝振りを整える剪定作業を始めており、そのような日頃の努力によって太い幹の樹齢１００年を超えた木々も毎年沢山の花を咲かせられるのだと言う。
　そしてその基になったのは、あるりんご栽培の農家から来た若者が、りんごの木を剪定するのと同じ感覚で枯れかかった枝垂桜の枝を切り落として、｢さくら切る馬鹿、うめ切らぬ馬鹿｣のことわざを知らないのかと大目玉を食ったが、翌年には切り口から新しい枝が伸びだし、樹勢も回復して以前より多くの花を付けたという事象があったからだそうである。

　下乗橋という内濠に架かった橋を渡ると天守が目前に迫って見える。赤い橋と雪をかぶった天守閣のコントラストが素晴らしい景観を見せてくれる。またさくらの枝に雪の花が咲いた添景と天守、緑の松に雪がかぶった添景と天守も趣があって、それぞれ一幅の絵になる風景である。

　弘前城の天守閣は慶長１６年(1611)に本丸西南端に５層の壮大な天守が創建された。しかし16年後の寛永４年(1627)に落雷により焼失し、その183年後の文化７年(1810)に幕府の許しを受けて3層櫓の現在の弘前城天守閣が完成した。濠の石垣の上に見える天守は威容があるが本丸広場からはそれほどでもなく小振りにまとまって見える。これはなかなか幕府の建設許可が下りず、3層の隅櫓を天守の改造することでやっと許可されたためである。現在残っている天守と三棟の櫓、五棟の門は全て重要文化財に指定されている。
　冬、天守閣は閉鎖されて上がることは出来ないが、晴れていれば本丸広場からも西の方角に岩木山の雄大な山容が見えるはずである。しかし今日は雲が垂れ込め雪が降ったり止んだりの天候で、司馬遼太郎が臨み見たすばらしい景観はわずかに時折見せる山裾から想像するしかなかった。

　本丸から北に向かい鷹丘橋という朱塗りの橋を渡ると北の郭(くるわ)に出る。本丸広場からこの付近にかけては枝垂れ桜が多くある。ボランティアガイドの人は弘前公園はさくらの種類が多いので、4月中旬から5月中旬までは何時来ても花見が出来る。ぜひ見に来てくれと勧めてくれる。また付近のさくらの名所を見ながら来るのなら、弘前を最後にしないと後から見に行く桜がつまらなく見えてしまうとか、高遠のさくらを見に行ったことがあると話したら、日本のさくらの五大名所と言われているのは、5位京都清水寺、4位京都嵐山、3位高遠城址、2位吉野山で1位は弘前だ。と絶対の自信で弘前のさくらを推奨していた。

　　坂道を下ると春陽橋に出る。弘前公園の橋は全て朱塗りである。この橋から見る西濠の桜はワシントンのポトマック河畔に似ているといわれている。ガイドはいつか案内したお客がポトマック河畔の桜を見たと言うので、弘前とどっちが良かったかと聞いたらどちらも同じくらいに良かったが、強いて言えば弘前の方の護岸が自然の土手なので気持ちが落ち着く感じがすると返事をしてくれた、とさりげなく話した。西濠に沿った道は両側から桜の枝が伸びており、桜のトンネルといわれる場所である。

　ガイドは更に、牡丹桜が多く植えられている四の丸から｢日本一太いソメイヨシノ｣や｢日本最古のソメイヨシノ｣、｢東内門｣、「東門」などを案内してくれた。2時間では少し強行軍で少し疲れた。ガイドは「弘前公園を良く見ようとするなら3日の日程が欲しい、１～２時間ではあまりにも勿体ないので、桜の咲く頃ぜひゆっくり見に来てもらいたい」と名刺をくれた。多少押し付けがましいところもあったが熱心によく説明してくれて、成程さくらの頃も来て見たいなと思わせてくれた。（写真は日本一太いソメイヨシノと東内門前のガイドさん）

　旅の最後は、レストラン山崎で「びゅうスペシャルランチを味わう」ことである。弘前は洋館とフランス料理の街ということで洒落たレストランが多い。レストラン山崎はその中でも老舗で無農薬野菜や自然育成豚、鶏などの津軽の食材を使用した料理を出してくれる店である。店内の雰囲気も良く、デジカメの写真を見て旅の想い出を反芻しながら食べ、且つワインを飲んで気持ち良い締め括りになった。
　(H22-1-16訪)