奈良 平城京跡から飛鳥へ (1) 平城京跡  イバイチの
旅のつれづれ


平城宮跡―飛鳥―西の京巡り

 平成22年(2010)10月奈良への旅をした。理由は3つほどある。その一つは、今年は日本の本格的な首都である平城京が和銅3年(710)に誕生してから1300年目になるので奈良県では「平城遷都1300年祭」のいろいろな行事が行われるが、そのテーマ曲をカラオケ教室で歌っているからである。
 (写真は平城遷都1300年祭のマスコット「せんとくん」)

 NHKテレビに「歌謡コンサート」という番組があるが、そこで谷村新司が「ムジカ」という曲を歌っていた。谷村新司の曲は好きなので、早速CDを買ってきたのだが普通のカラオケのCDにあるはずの楽譜が付いていない。「フォーク調のCDには楽譜が無いことが多いんですが」と店の主人が言っていた通りである。インターネットで調べたら合唱用の楽譜があったのでそれをダウンロードしてやっとカラオケの練習ができるようになった。

 その時始めてムジカとはラテン語でミュージックのこととか、今年は平城遷都1300年になるとか、この歌が祭の公式テーマソングだということが分かった。また祭に合わせて平城京大極殿が復元されることも知り、奈良への関心が高まったのである。

 次の理由は、ニュースか何かで1280年前の天平2年(730)に建てられた奈良薬師寺の東塔(国宝)という三重塔が解体修理をするので今後10年間は見られなくなるということを知ったからである。この塔は薬師寺創建の時のものが唯一現存しているものであり、昭和56年に再建された西塔と対になっているのだが、この二つの塔を同時に見るには薬師寺から大分離れたところにある大池というところに行かなくてはいけない。

  暫らく前に友人からこの二つの塔が夕日に輝いている印象的な年賀状を貰ったが、それ以来何時かそこからの景色を見てみたいと思っていた。それが平成22年の11月末あたりから今後10年間東塔が見られなくなるというのである。10年後は生きていないかと思うので行くなら今しかないと思った。

 3番目の理由は、私の先輩であり良き上司であったMさんからイラスト作品を頂いたことによる。現在東京に住んでいるMさんは現役時代から油彩画の趣味をお持ちだったが、その後イラスト画に転向し平成17年には全国イラストコンクールに入賞された技量の持ち主である。その方から「石舞台の心のコダマ」というイラスト画を送って頂いたので奈良に行ったら是非描かれている飛鳥の石舞台に行きたいと思っていた。

1. 平城宮跡

 今回はエースJTBの「万葉の夢 奈良」という個人パックで行くことにした。これは東京から往復「のぞみ」で指定ホテル1泊して26,800円というものである。それに連泊分の料金と水戸から東京までの運賃などを含めると42,200円である。ホテルは奈良ロイヤルホテルを指定した。ここには温泉があるからである。しかし夕食は含まない。

 このパックは乗れる電車も指定されていて、東京発11時の「のぞみ」に乗り、近鉄大和西大寺に14時に着くのが水戸からでは最も便が良い。近鉄大和西大寺駅からは無料のシャトルバスが出ており、14時30分に平城宮跡に着いた。

 奈良には平成2年春に訪れたことがある。その時平城宮跡には発掘調査した出土品や建物の復元模型を展示した資料館しか無かった。大極殿跡には柱の礎石のあったところに柘植(つげ)の苗木が丸く点々と植えられていたが、そのほかは広々とした草原が続いていたのを思い出した。

 その後平成10年(1998)に平城宮の入り口にあたる朱雀門が復元された。同じ年の12月には古都奈良の文化財として東大寺などと共に世界遺産に登録されている。なぜ地上には何も無い広々とした草原がユネスコの世界遺産なのか疑問だったが、それは地下に残された遺構や木簡などの地下埋蔵文化財のだという。世界遺産に地下の遺構が認定されたのは平城宮跡だけなのだそうである。

 奈良市の中心部にある120ヘクタール(約120町歩、東京ドーム25個半分の面積)もの1300年前の遺構がまとまって現在まで残されたのは奇跡のようなものだが、発掘調査はあまり進んでおらずあと100年かかると言われているそうである。朱雀門復元の時も地下にある遺構を損傷しないよう細心の注意を払って進めたという。

 シャトルバスは朱雀門から大和西大寺駅寄りの場所にある広いバスターミナルに着く。近くには遣唐使船を復元展示したものが置かれていてその隣に平安京歴史館として平城京や遣唐使のVTRやテーマの展示などがあるが、そこに入る500円の入場整理券は売り切れていて入れなかった。

 白壁に朱色の柱が鮮やかな2層の朱雀門がある。そこから800メートル真北に「平城遷都1300年祭」に合わせて大極殿が復元されたが、そこに向かって大勢の観客が歩いている。障害者、75歳以上の高齢者用にハートフルトラムという乗り物が走っているが、運行頻度はあまり多くないようだ。

 敷地内には近鉄奈良線が5〜10分置きぐらいに走っている。国の特別史跡であり、世界遺産に指定された場所のど真ん中をしょっちゅう電車が走っているのはそぐわない景色であり、移転も検討されているが費用の関係で何時になるか分からないそうである。

 大極殿は長さ44メートル、幅20メートルの大きな建物で直径70センチの朱色の円柱が44本、屋根瓦約9万7千枚が使用されている。天皇の即位式などの儀式に使用された平城宮最大の建物を復元したものである。内部には中央に高御座(たかみくら〜天皇が座る場所)が置かれている。
 また鴟尾(しび〜屋根の棟木の両端に置く飾り、)の高さ2.6メートルある模型が展示されている。天井に近い小壁には上村淳之による四神(麒麟・鳳凰・霊亀・応竜)と十二支が描かれている。


 大極殿から朱雀門を眺める。大極殿前庭にはテントが張り巡らされているが、その先の南門広場、朱雀門広場のさきに朱雀門が大きくそびえているのが臨める。大極殿から東側の道を行くと日本で初めての庭園と云われる東院庭園が復元されているが、何百メートルも歩かなくてはいけないので割愛した。大極殿前にある広場では一日に2回「あおによしパレード」というのがあるのだが、時間が合わなくて見られなかった。

 今後この平城宮跡は、国営公園として地上の建物は復元せず主として地下遺構を整備保存するらしい。しかし広い草原の両端にだけ建物があり(その間約800メートルある)そこを歩く以外に見せ場が無いのであれば観光客は敬遠してしまうだろう。
 今回、1300年祭という名前に惹かれて大勢の人が来ていたが、往復1600メートルを歩き、期待していたものの見る価値が少なく、幻滅を感じた人が多かったと思う。今後どうすれば良いのか議論の余地があるのではないだろうか。

(H22-10-12訪) 

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