奈良2

奈良平城京跡から飛鳥へ (２) 飛鳥巡り①　

イバイチの
旅のつれづれ

2、飛鳥巡り (1)

　今回宿泊した奈良ロイヤルホテルのある近鉄奈良線新大宮駅からは、大和西大寺で近鉄橿原神宮線に乗り換え、更に橿原神宮から近鉄吉野線で飛鳥駅まで約１時間、運賃は５６０円掛かる。
　飛鳥駅前の「飛鳥びとの館」という総合観光案内所で「飛鳥王国パスポート」というものを勧められ１００円で買う。これにはマップや観光ポイントの他に、各所の割引券が２０ヶ所分付いていてとてもお得なのだという。飛鳥観光はレンタサイクルが良いと聞いていたので、早速このパスポートを利用して、１台９００円のところ１００円引きの８００円で借りることにした。

（１）高松塚古墳

　マップに従って国営飛鳥歴史公園高松塚周辺地区に行く。歩道と並行してサイクリングロードが完備しており危険を感じず走れるのが良い。国営飛鳥歴史公園とは１９７４年に開園し、高松塚周辺地区、石舞台地区、甘樫丘地区と研修所のある祝戸地区から成っており、更にキトラ古墳周辺地区が整備中なのだそうである。

　入口に国営飛鳥歴史公園館という案内所があって、史跡の位置を示すジオラマや飛鳥の歴史や自然を映像で紹介するビデオなどがある。高松塚古墳に行く道は整備されているがアップダウンが多く、自転車を降りて押して行くところも多くある。

　途中に「花＊四神」という草木で動物をかたどった物を陳列した場所がある。四神とは高松塚古墳やキトラ古墳の石室の壁に描かれている四つの聖獣たちを指しており、東壁に青龍、南壁に朱雀（高松塚古墳では盗掘時に破壊されていて現存しない）、西壁に白虎、北壁に玄武（亀と蛇）が描かれ、四方を鎮護する役目がある聖獣たちである。

　その先に高松塚壁画館がある。高松塚古墳壁画は保存上の理由で公開できないので、石室内の模型と壁面を模写したものを展示してある。高松塚古墳の壁画は男子４名、女子４名の極彩色の群像が東壁と西壁に２組ずつ描かれ、それが優れた筆致で細かく描かれているので一躍有名になり国宝に指定されたのだが、その後の保存の不手際から大きく劣化が進んでいることは各種報道でご存じの通りである。(写真は壁画館入場券と壁画館入口）

　　絵画館から急坂を上ると高松塚古墳に出る。この古墳は２段式の円墳で、１９７２年（昭和４７年）に発掘調査が行われ、石室から極彩色の壁画が発見された。現在石室は撤去されて古墳の外観だけになっている。古墳の正面に解説板が置かれている。

　古墳に行く途中の坂道に開けた場所があり、田園風景が見渡せる。そこには飛鳥地方の昔からの風景であるという解説の板がある。この古墳は藤原京のあった頃の西暦７００年頃に造られたそうで、平城京遷都１３００年にあたる今年から観ると殆ど同時期に出来たものである。その頃から現在まで続いた風景だと思うと、何らかの感慨を催さずには居られない。

（2）橘寺　

　高松塚古墳から次の目的地「橘寺」に行く。この寺は聖徳太子の生誕した場所として知られている。太子は成人した後、推古天皇に勝鬘経（しょうまんきょう）の講義をされた時に数々の奇跡が起こったので、天皇からこの地に寺を建てるよう命じられて橘樹寺という寺を創設したのが始まりだといわれている。聖徳太子建立七ヶ大寺の一つとして隆盛を極めたが、約９百年後兵火で焼かれ衰退したという。

　橘寺の語源は昔、田道間守（たじまもり）が中国から持ち帰った橘の実を蒔いたことからこの地を橘と呼ぶようになったと伝えられている。その由来から橘がたくさん植えられているかと思ったが、２～３本しか見かけなかった。(写真は拝観券）

　橘寺の本堂（太子堂）に入る。御本尊は「聖徳太子勝鬘経講讃像（重文）」という太子像だが、田道間守の像も祀られている。また少し離れて観音堂がある。ここには腕が６本ある「六臂如意輪観音像（重文）」が祀られている。他に聖倉殿という寺宝の収蔵庫があり、平城遷都１３００年祭の一環として特別公開がされていた。ここには太子に仏教を教えたとされる日羅上人立像や太子の事績を８幅の絵に描いた「絹本聖徳太子八幅絵伝（伝土佐光信筆）」などの重要文化財５点が展示されていた。(写真は橘寺本堂）

　聖倉殿の前に往生院という念仏や写経の研修道場がある。本尊は阿弥陀三尊だが左端に大きな太子像が置かれ、大きな目を見開いて異彩を放っている。しかしここの特徴は著名な画家たちから奉納された格天井に描かれた２６０点の花の絵である。平成９年建立というがまだ新しく見える建物である。畳に寝転んで天井の絵を見上げると永平寺の天井画の様に高くないため一つ一つの絵がはっきりしており、ゆっくりのんびりと見ていられる。

　本堂の前に「黒の駒」という太子の愛馬の像がある。この馬は天空を駆け、達磨大師の化身だとの伝説がある。太子は厩戸皇子といわれるように乗馬は得意だったらしい。この当時の最高権力者である蘇我馬子もそうだが人名に動物にちなんだ名を付けるのは当時の朝鮮半島の新羅（しらぎ）、百済（くだら）の風習に倣ったものということである。また本堂の左手には２面石という善と悪の心の持ち方を現したという石造物がある。(写真は黒の駒像と観音堂、及び２面石）

(3) 石舞台古墳

　橘寺は静かだったが石舞台には大勢の人がいた。昔は棚田の中に古墳だけがあったらしいが、近年になって国営飛鳥歴史公園の石舞台地区として古墳には濠を巡らせ、周囲には古墳の周囲のなだらかな棚田地形を活かした広大な芝生広場をはじめ駐車場、売店、トイレなどが整備されている。

　この古墳は７世紀初頭のものと推定されているがその当時の大和朝廷の実力者は蘇我馬子で江戸時代から馬子の墓ではないかとの考察がある。昭和８年から１０年に掛けて発掘調査が行われ、方形の墳丘、堀、外堀の存在が確認され、築造は７世紀初め頃と推定されている。(写真は古墳への入場口付近と拝観券及び解説板）

　それ以前の墳墓は仁徳天皇陵の様に規模の大きさが競われたが、この頃から新しい技術である石材加工、土木、搬送などが進展し、その最新技術を誇示する墳墓が造られるようになったらしい、同時代の聖徳太子の墳墓も規模は小さいが石材を多用しているそうである(江戸時代は聖徳太子の陵に入れたので、その時調べた石室の大きさなどを記した資料がある)。

　何にしても30数個で構成された岩の総重量は約2,300トンにもなり、特に天井石は約77トンもあって、造られた当時の優れた土木・運搬技術がうかがわれる。築造当時は土で覆われていた筈だが、盗掘だけではなく洪水などの現象で表土が流出したと推定されている。また月の夜、狐が美女に化けてこの上で舞ったという言い伝えもあり、今回の奈良巡りの最初に紹介した先輩のＭさんから贈られた「石舞台の心のコダマ」というイラスト画が目に浮かぶのである。（写真は左が西方からと右が東方から見た石舞台）

　石室の内部に入る。１３００年以上前からの石の構築物がそのままの状態で置かれている。高さは４.８メ―トルで長さ７.８メートル、幅３.４メートルという大きなものである。古代史に詳しいらしい人がいろいろ説明していた。この中に石棺が納められていたはずだが発見されておらず、発掘調査の時発見された平らに加工した凝灰岩の破片を基にして復元された石棺が、石舞台を囲む外堤の一画に展示されている。

（H22-10-1３訪）

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