マドリード

スペイン紀行　　（１．マドリード ）

イバイチの
旅のつれづれ

　　　　　　　　　　
　太陽と風車の国スペインハイライト１０日間

　　　第１日目　成田→マドリード　　（飛行機）
　　　第２日目　プラド美術館
　　　　　　市内観光　　　(貸し切りバス）

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１．成田からマドリードへ

　今（平成２４年）から１６年前の平成８年(1996)１月に妻とパックツアーで１０日間のスペインへの旅をした。最初の計画では、４月以降の旅行シーズンには一人３０万円以上するものが、シーズンオフの１月は２２万で行けるというのでスペイン・イタリアハイライト１１日間の旅というＪＴＢ旅の通販「旅物語」のツアーで行こうとして申し込んだ。しかし３月中旬以前の申し込みが少なく当分出発の見込みが無いと言われてしまった。

　仕方が無く、改めて問い合わせたところ「太陽と風車の国スペインハイライト１０日間」というツアーが催行するというので、それに決めて申込んだ。価格は一人１８万８千円である。改めて送られてきた旅行日程表を良く見ると、マドリードのプラド美術館、コルドバのメスキータ（回教寺院）、グラナダのアルハンブラ宮殿、バルセロナのサグラダファミリア（聖家族教会）など見所が沢山あるのが分かった。

　平成８年１月２２日に成田空港からイベリア航空ボーイングＢ７４７機での出発である。ツアー参加人員は添乗員を含めて２７名である。幸運なことにツーリストクラスが満員だったので、その上のエグゼクティヴクラスに乗れることになった。機首に近い９番目のゆったりした二人席である。マドリードまでは途中モスクワで給油があるため、１６時間も懸りうんざりするほど長いのだが、今回は快適な旅になるだろうと良い予感がした。

　成田から約９時間後モスクワに到着した。夕闇が迫っていたが、空港付近の灯火は少なく一面雪景色で、気温がマイナス１５度とか云うこともあり寒々とした感じである。手荷物は置いて行くと盗られるというので全部持って空港の中の免税店がある待合所に行き給油と掃除完了を待つのだが、再搭乗するのに２時間以上かかった。　空港でトイレに行ったが水も出ないで不潔極まり無く、これが国際空港かと呆れてしまう。女子のトイレも同じような状況だと云うことだった。

　免税店ではルーブルではなくアメリカドルが標準通貨になっており、円で買物をしてもおつりはドルでくるようになっている。キャビアの缶詰が１缶４千円だった。ほかに酒類，煙草，革製品などがあったが、今から旅行が始まるのに買物をする人も結構多く、旅行中の持ち運びが大変だろうと他人事ながら心配になった。妻はショーウインドーに飾ってあった明るく可愛らしいロシア人形が、照明によつて黒とグレーの影のなかにポッと浮き立って見えたのが印象に残ったと言っていた。（写真はロシア人形のショーウインドー）

　マドリード到着は現地時間で午後１０時２０分、１時間の延着だった。空港はオレンジ色の照明が輝き、暖かく活動的な街のイメージを強く受けた。モスクワでの冷たい雰囲気とは対照的な感じだった。外国に行き初めて街並みを眺めた時はいつでも強烈な印象を受ける。現役の頃、初めて日本から北米ロスの空港に着いたときのアメリカ人の印象は、ひっきりなしに飛び交う飛行機の爆音と自動車のエンジン音の喧騒の中で、周りにたたずむものには目もくれず、やるべき事をどんどん進めると云う感じで心細かった。ロンドンでのイギリス人は、自分たちの生活をきちんと守り、お互いの行動には干渉しないと云う感じがした。今回のスペイン人は、マドリードの暖かい灯りのせいか陽気で騒がしく世話好きと云う印象を受けた。

２．プラド美術館

 　マドリード市内観光の最初の見学場所はプラド美術館である。ここはルーヴル，エルミタージュと共に世界の３大美術館といわれているが、ここの見学は今回の旅行の大きな目的の一つでもあり、大きな期待を抱いて入場した。美術館の正面入口はベラスケス門と云うがそこからではなく、左側のゴヤの像が見守るゴヤ門から直接２階に入った。
　ガイドの説明を聞いていると絵を見る時間が無くなってしまうと思い、断って別行動をする事にした。最初に入った部屋にフラ・アンジェリコの「受胎告知」があった。それを模写している人がいたが、出かける前に見た美術雑誌「Ｌａ　ｍｕｓｅ」に大きく掲載されている絵だったので、それにすぐ会えてこれは幸先良いと思った。（写真は入場券、ゴヤの像、ゴヤ門入口付近、「受胎告知」の絵）

　ムリーリョ，ティツィアーノなどの大きな絵を見ながら中央のベラスケスの部屋に出た。美術誌でよく見る名画が一堂に会している。「マルガリータ王女」「フェリベ４世」「馬上のカルロス皇太子」など沢山ある中で、最も大勢の人が居るのは「ラス・メニーナス」の前である。高さ３．２メートル、幅２．８メートルの大きな絵である。半円形の大きな部屋の中央奥にあり、一番明かりが来ない場所にある。鏡に映った国王夫妻の顔はぼんやりしており、想像していたより地味な感じだった。（写真はベラスケスの部屋の一部、「ラス・メニーナス」の絵、図録の表紙になっている「マルガリータ王女」の絵）

　いつも感じることだが日本で海外の美術展を見に行くと黒山の人だかりで落着いて見て居られない。やはり現地でゆっくり見られるのが一番良い。またフラッシュをたかなければ写真撮影も良いと云うのも有難い。しかし時間が限られているのであまり長居は出来ず部屋から中央通路に出ると出入り口の正面にこれもベラスケスの「ブレダの開城」の大きな絵が展示されていた。（写真は「ブレダの開城」の絵）

　そのまま中央通路を真っ直進み、ゴヤの「カルロス４世とその家族」のある部屋に出た。他の団体のガイドが皇太子の脇の女性はまだ正式に婚約をしていないので横を向いていると云う説明をしているのを聞く。次に「着衣のマハ」と「裸のマハ」が並んでいる部屋に行く。「着衣のマハ」はとても色っぽく、魅力的でコケティッシュな感じだった。「裸のマハ」からは気怠い表情がうかがわれた。写真は「着衣のマハ」と「裸のマハ」の絵）

　更に「１８０８年５月３日」と云う題でナポレオン時代のフランス軍の進駐に対して暴動を起こした市民が、銃殺される場面を描いた絵の前に出る。この付近の部屋にはゴヤの絵が沢山あり、反対側の部屋には若い頃描いた田舎の結婚風景や田園風景などが展示されている。階下に展示されている晩年の「黒い絵」シリーズを含めて画風が４回変わったとガイドが説明していたが、実際にもそれぞれの絵はこれが同一人が描いたのかと思うほど異なった印象を受けた。（写真は「１８０８年５月３日」の絵）

　更にエル・グレコの「聖三位一体」の絵の前ではガイドがグレコが描いている人物像は全部実際より上下に引き延ばしたようになっていると説明していたがその通りだった。時間が無くなり急いで１階の離れた場所に在るボッスの「快楽の園」を見に行った。画集から見ると大きい絵だと思ったが、実物は２メートル四方ぐらいしかなかった。近くにあるブリューゲルの「死の勝利」，デューラの「自画像」「アダムとイヴ」，ルーベンスの「三美神」なども見た。（写真は「聖三位一体」と「三美神（前）」「パリスの審判（奥）」の絵）

　最後に売店に行き厚い原文のカタログと薄い日本語訳のものを買った。約５千ペセタ（1ペセタ＝85円）だったが、日本円でもＯＫというので１万円札を出したら何かペラペラ言うので困ったが近くにスペイン語が判る日本人が居て５千円札が無いかと言っているよと教えてくれた。財布の中を調べたらたまたま有ったのでそれで支払ったが、その後食事をするとき両替が出来ず添乗員から借金する羽目になり、おつりを貰うようにするべきだったと後悔した。何にしても時間に急かされてただ見ただけで終わってしまい、心の趣くままにゆっくり観賞出来なかったのが残念だ。

３．マドリード市内見物

 　プラド美術館を出て市内観光をする。まず車内から王宮を観る。ルネッサンスと擬古典様式が混じりあったという堂々とした外観である。次に同じく車内からマドリードで最も美しい門と云われるアルカラ門を観る。この門は１８世紀に国王カルロス三世の命で建て替えられたもので、当時は５つに分かれた門のうち中央の大きな入口は国王しか通れなかったそうである。（写真前２枚は王宮の外観、後２枚はアルカラ門）

　その後スペイン広場に行く。ドン・キホーテがサンチョ・パンサと旅に出るところの銅像がありその前で写真を撮る。二人の像の上方に作者のセルバンテスの像が置かれている。スペインではドン・キホーテとコロンブスが代表的有名人であり、あちこちにその事跡が残っている。市内にある王宮や建造物の豪華な彫刻を見ると、ローマは別格にしてもその他のヨーロッパ諸国の街角の風景より重厚な感じであり、いにしえのイスパーニャ無敵艦隊を生み出し、世界の中心だった国家首都の面影が彷彿と目に浮かぶ思いがする。（写真はドン・キホーテがサンチョ・パンサの像）

　コロンブスの像が立っているコロン広場の前のカフェテリアでパエリヤ料理の昼飯を食べる。その後自由行動になるのだが、雨が降り出し、また通貨の両替をやっていなかったのでペセタの手持ちが無く、また「ゲルニカ」が展示してある「ソフィア美術館」が休館日だったので、予定していた美術館巡りを諦めホテルに戻った。同行のツアーの内、半数近くの人はオプショナルツアーの白雪姫のお城のモデルになったと云うゼゴビア観光に出掛けた。（写真はコロンブス記念碑）

　暫くホテルで休憩した後、小雨の中を近くにあるというスペイン最大のデパート「エル・コルテ・エングレス」に行く。お土産のベルトと自分が着る皮襟でコールテン（コーデュロイ）生地のコートを買う。ちょうどバーゲンで１割引になっており、１８，８００ペセタ（１５，９８０円）だったので買い得した気分だ。スペインにはロエベという高級革製品のブランドが有名だが、普通の革製品は安いというので、最初はレザーのコートを買うつもりだった。しかし結構値段が高く、また気に入ったデザインの物も無かったのでコールテンで良かったかなと思う。

　スペインは午後２時から４時まではシェスタの時間で一般商店は殆ど店を閉めてしまう。従業員は家に帰って昼飯をとり、また出勤するのでラッシュアワーが１日２回づつあるのだそうである。また夕食のレストランは早くて７時、普通は９時開店と遅く始まり、その分夜遅くまで賑わっているそうである。旅行者はバール（バー）とかカフェテリアを利用するしか無いが、丁度セブンイレブンがホテルの近くにあったので、そこでビールとサンドイッチなどを買ってきた。ビールは１缶７０～８０ペセタ（６０～６８円）でホテルの２分の１か３分の１の値段である。しかし日本のセブンイレブンと違って外国のセブンイレブンは男のための店で女子供はあまり入らないそうで、日本の身近で親近感があるのとは一寸違った感じだった。

（以下次号）

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